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SleepEase|5話:「夢の中に取り残される」

    彼女は夢の中で、彼と話していた。
    静かな部屋、窓の外は夜。
    彼は笑っていた。優しくて、少しだけ悲しそうな顔で。

    「…ねえ、これって現実?」

    彼は答えなかった。ただ、彼女の手を握った。
    目覚めたあと、彼女はスマホを確認した。SleepEaseの通知が届いている。

    《夢の記憶統合:完了》
    《現実との整合率:100%》

    でも、彼はまだ眠っていた。
    彼女はそっと声をかける。

    「ねえ、起きて。…さっきの夢、覚えてる?」

    彼はゆっくり目を開けた。

    「…夢?何も見てないよ」

    彼女は言葉を失った。
    夢の中で、彼は確かにそこにいた。会話もした。手も握った。

    その夜、彼女はSleepEaseを起動せずに眠った。
    でも、夢は始まった。

    彼がいた。昨日と同じ部屋。同じ夜。
    でも、彼は彼女を見ていなかった。

    窓の外を見つめて、静かに言った。

    「…君は、もう現実に戻ったんだね」

    彼女は目を覚ました。
    スマホには通知が届いていた。

    《あなたの夢に、パートナーの記憶が残留しています》
    《同期解除まで、あと3回の睡眠が必要です》

    彼女は震えながらスマホを伏せた。
    夢の中に、彼が取り残されている。
    それとも——取り残されているのは、自分のほうなのか。

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