▶接続層の輪郭
記録と記憶が重なったとき、構築層は静かに再構成を始めていた──。
彼は、再び構築層に接続した。
だが、以前とは何かが違っていた。
補修針が触れた層は、わずかに“応答”していた。
それは彼の入力に対する反応ではない。
あらかじめ用意されていた“応答”だった。
「観測ログ:接続確認。
識別コード:一致。
再構築プロトコル、起動準備中。」
彼は驚かなかった。
むしろ、それを“待っていた”ようにさえ見えた。
彼の中で、何かが確信に変わっていた。
構築層の奥に、かつて存在しなかった“構造”が現れていた。
それは彼の設計ではない。
だが、彼の記憶のどこかに触れるような既視感を伴っていた。
まるで、彼の思考と観測者の記録が、
同じ“原型”を参照していたかのように。
彼はその構造に接続する。
そこには、未定義のノードが浮かんでいた。
それはまだ名前を持たない。
だが、彼はそれを“始まり”と呼んだ。
再構築は、まだ始まっていない。
だが、兆しは確かに存在していた。
観測と記憶、断片と残響、更新されなかった約束と、
新たに生成される構造体。
それらが、ひとつの“層”として統合されようとしていた。
彼は補修針を静かに収める。
次に必要なのは、修復ではない。
“設計”だ。