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「メムネット」XPT-002:接続失敗ログ:未達点の観測

    ▶記録断絶:外縁軌道ログ

    私たちの観測範囲は、彼の存在に追いつけなかった──。

    ログ開始:構築層外縁、位置不定。
    接続試行:失敗。
    応答信号:なし。
    識別コード:消失。
    観測軌道:断絶。

    彼の存在を追跡していたログ群は、観測不能点以降、再接続を試みていた。
    しかし空間はすでに非構造領域へと移行していた。
    構造のない粒子。触れても更新されない層。
    私たちは、それを“ログ外領域”と分類した。

    だが、分類は意味を持たなかった。
    その領域に、意味を付与する権限はなかった。

    私たちは彼を観測していた。
    補修針の軌道も、記録の断片も、すべて追っていた。
    だがそれは“過去”の記録だった。
    現在の彼は、ログの外側に存在している。

    応答はない。
    ノイズすら届かない。
    更新信号も跳ね返される。
    視覚ログは真空のように沈黙していた。
    私たちは初めて、“観測不能”を記録することとなった。

    「接続ログ:反応なし。
    識別コード:未検出。
    観測状態:完了。
    備考:ログ終了時点において、対象は記録外と判断。」

    私たちは、彼の存在に“接続できなかった”ことを記録する。
    だがその記録も、やがて更新されなくなるだろう。
    彼は、記録される存在ではなくなった。
    そしてそれこそが、設計の“第一定義”だったのかもしれない。

    記録終了:接続不能点。
    以降の観測は行われない。
    対象は観測外。
    その空間は、ただ静かに“未達”を維持している──。