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SleepEase|12話:「完璧な朝」

    朝、彼は目を開ける。
    窓から差し込む光が、カーテン越しに柔らかく揺れていた。

    隣には、彼女がいる。まだ眠っている。
    彼はそっと起き上がり、キッチンへ向かい、トーストを焼き、コーヒーを淹れた。
    ミルクは、少しだけ少なめに入れる。

    彼女が目を覚ます。
    「…いい匂い。今日、ミルク少なめでしょ?」

    彼は笑った。
    「なんでわかったの?」

    彼女は肩をすくめて答える。
    「なんとなく。最近、わかるようになってきた」

    ふたりは食卓についた。

    彼女がトーストをかじると、端が少し焦げていた。
    「またやっちゃった…」
    彼女は苦笑し、彼は焦げた部分をくり抜いて皿に置いた。
    「これ、ハート型に見える」

    彼女は吹き出して、自然に笑った。
    その笑いが、あまりにあたたかくて、彼もつられて微笑む。

    ふたりはしばらく見つめ合い、微笑み合った。

    「…最近、なんかうまくいってるよね」
    彼女が言う。

    「うん。なんか、全部噛み合ってる感じ」
    「怖いくらいに、ね」

    彼は少しだけ黙ってから、言った。
    「君の笑い方が好きだから、つい狙っちゃうんだよ」

    彼女はまた笑った。
    でも今度は、少しだけ涙ぐんでいた。

    その日、ふたりは何も特別なことをしなかった。
    ただ、静かに過ごした。
    部屋の空気は、ずっと心地よかった。

    夜、ふたりは手を繋いで眠った。
    SleepEaseは、もう起動していなかった。
    動いていなかったし、必要もなかった。
    でもふたりは、確かにそこにいた。

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